災害用早期設置「住宅復興支援ハウス」の開発

三浦房紀教授と記者発表

備蓄の必要性を提言

石原新太郎 東京都知事        藤田忠夫宇部市長           山口県議会議員

新潟県中越地震で試用し、 1 ヶ月間災害ボランティアの皆さんが使って頂きました。

三浦房紀教授らと設立した「防災ネットワークうべ」が大賞を受賞しました。現在、各校区の自主防災組織の立上げのお手伝い
をしています。

研究開発を始めた動機・経緯

平成 7 年( 1995 ) 1 月 17 日に発生した阪神・淡路大震災では、6千名を超す死者を出す大惨事となり、兵庫県 で は小中学校の体育館や公民館、市役所のロビーなど、 1,153 か所の避難所に約 32 万人の被災者が収容されました。
私が初めて神戸市に入ったのは、震災発生から 3 日目でした。
必要とされた応急仮設住宅は約5万戸でしたが、1か月後に建築された応急仮設住宅は、わずか 1,250 戸に過ぎず、また市街地では敷地の確保すら難しく、7ヶ月たった8月 11 日までに完成した応急仮設住宅は 48,300 戸でした。
多くの被災者は半年以上もプライバシーもなく、また十分な暖房や換気設備、入浴施設のない公共施設の床で、大勢の他人と長期に渡って、寝泊りする生活を強いられました。震災によるストレスと相まって、心身に大きな負担となった。特に高齢者の肉体的精神的疲労は大きく、そのために身体に不調をきたし、亡くなられた方も多くいます。
「何とか、一週間程度で 5 万戸の仮設住宅が建てられないだろうか。」 との発想から、私の研究開発が始まりました。


(上写真左)市役所に避難した住民 体育館での避難生活1995.1.21  西宮市立平木小学校体育館
(上写真右)1995.1.21  神戸市市役所 2 階

平成 7 年 6 月

太平洋横断したヨットの経験から、床面積5~10㎡程度の狭くても最低限の生活設備を備え、家族(4人程度)で居住することが可能な緊急避難施設(簡易ハウス)を、仮に県(47都道府県)ごとに、100戸程度備蓄しておき、災害の発生と同時に、備蓄倉庫からクレーン付トラックで緊急輸送すれば、地震発生から3~7日で、約50000戸、各被災者の自宅近くの空き地等に設置することが可能です。
避難生活が過酷である冬季には、特に有効であると思われることから、まず図面を作成し、試作品を作りました。

「ズームイン朝」(日本テレビ)
「おはよう日本」(NHK)に取り上げられました。

 

2 年後、宇部市内に住む独居老人の家として
活用されました。
(現在も小野で使われています)

朝日新聞(全国版)

日立化成工業による商品化

新聞で当時大きく取り上げられ、全国の大手企業から打診があり、日立化成工業㈱との共同開発が始まり、商品化が決定しました。

日本経済新聞 の第一面に取り上げられました
一年掛けての開発でした。横浜や北九州などで開催された展示会では、知事や市長も来られ、大好評でしたが、備蓄は困難という大きなハードルがあり、売り上げはほとんどありませんでした。備蓄に対する行政への訴えが大きな課題となり、本格的な事業化は中止になりました。

初めての論文

山口大学の三浦房紀教授の指導で、初めて地域安全学会に論文を書かせて頂き、静岡県防災センターで論文発表までさせて頂いた。

山口大学大学院入学

平成 11 年、 18 号台風の高潮による西岐波地区や宇部空港の惨状を視察して「これから、災害多発時代がやってくる」と予感して、防災対策を学ぶ目的で山口大学大学院・防災システム工学科に平成 12 年 9 月入学しました。
過去の被災地を視察し、今まで以上に、緊急避難施設に必要性を感じました。
平成 14 年9月、修士課程修了。
平成 14 年 10 月、博士課程に入学しました。
平成22年3月に山口大学より学位「博士(工学)」を授与。

組立式「住宅復興支援ハウス」

2004.11.9 山口県庁にて撮影
特許申請中
保管時:全長2.5m、幅2.2m、高さ0.9m、全重量800kg(備品とも)
組立時:全長3.8m、幅2.2m、高さ2.2m( 床面積6.7㎡、居住定員4名)
組み立て時間:約60分  解体時間:約45分(クレーン不要)

(上写真左)3トントラックに3個積載可能。
(上写真中央) クレーンで降ろした後は大人4名で組み立て可能。
(上写真右)天井部を持ち上げ、側面を起こす。

(上写真左)奥の壁を起こすと、ハウスが固定される。
(上写真中央) 最後に前面の壁を起こす。前面には、庇とバルコニー部分が、予め収納されている。
(上写真右)約60分で設置完了。最後に転倒防止用の補強ロープを張る。

(上写真左)閉塞感を解消するために、7箇所に窓が取り付けられている。
(上写真中央)連続的に設置した場合のプライバシー確保のため、片面には窓が設置されていない。
(上写真右)奥の壁には、窓を3箇所設置。上部窓は、回転式で、左右どちらの風も室内に取り入れ可能。下部の窓は非常時避難用。

(上写真左)ジャッキを6箇所設置。25㎝までの傾斜地、またベースにより軟弱地にも設置可能。車輪により、設置後の移動も可能。
(上写真中央)電気は100Vと12Vの2系統。12Vは太陽電気でバッテリーに充電。
(上写真右)外灯は12V、100V用を配置。内部には太陽電池式換気扇を設置。

外観上の大きな特徴は、
収納時に全長2.5m、幅2.2m、高さ0.9mとなり、約3分の一のサイズになり、保管輸送が容易であること。ジャッキを有することにより、傾斜地にも設置可能。「バルコニー」と「手すり」があることによって、一戸の住宅として、玄関の機能を持っている。
構造体の素材は、再利用と大量生産を考慮すると、ウレタンフォームを強化プラスティックで挟んだサンドイッチ工法が有効である。(試作品はベニアとスタイロフォーム)

(上写真左)内部にはベッド4台が設置されている。下部ベッドは向きを変えることにより、Wベッドにもなる。ベッド下は物入れ左側のベッド下は、引き出し収納を採用
(上写真中央)上部ベッドは壁面に収納。入口右面には、流し台、ガスコンロ冷蔵庫を配置。テーブルは壁面に収納可能。
(上写真右)トイレは、簡易水洗式ポータブル(長期用としてはヨット用のトイレを使用し、外部に清水・汚水タンクを設置する)



(上写真左)キッチン部分(流し台、吊戸棚コンロ、冷蔵庫を配置)
(上写真中央)シャワールーム兼トイレの入口鏡と物入れ棚が取り付けられている
(上写真右)シャワールーム兼トイレ

室内設備として、ベッド(4人分)、収納スペース(ベッド下、引き出し)、トイレ、シャワー、流し台、吊戸棚、コンロ、冷蔵庫、換気扇 ( 太陽電池式 ) 、窓(6箇所と天窓)、テーブルな どがあります。
居住性について :絶対的スペースは狭小ですが、昨年11月~12月末まで新潟県小千谷市で、4名の災害ボランティアが約1ヶ月間使用しています。なお、壁の厚さは床80 mm 、天井50 mm 、壁面40 mm ですが、30 mm のスタイロフォームが内臓されています。

(上写真左)平面図
(上写真右)収納時の断面図

(上写真左)新潟県小千谷市に設置された住宅復興支援ハウス
(上写真右)災害ボランティアの青年たち

私は昭和52年、6mの手作りヨットで単独太平洋横断に挑戦し、147日間、狭い居住空間の中で生活をしました。その経験と、ヨットやキャンピングカーの機能的な間取り等を参考にして、阪神・淡路大震災以来、緊急避難施設の開発を続け、試作品6台、模型6台を製作しました。
備蓄には大きな経費を必要としますが、度重なる自然災害の発生で「備蓄」という思想が受け入れられる時代がきたように思います。多くの皆さまのご意見を参考にし、よりニーズにあった緊急避難施設を開発したいと願っています。ご協力の程、よろしくお願い申し上げます。

岡村 精二 (建築家、工学博士、山口県議会議員)
〒 759-0206  山口県宇部市厚南区 第二原  岡村精二事務所